作新学院の戦いはイバラの道だった。
2回戦から登場し、久賀(山口)に5−2で勝った。
4回に1点を先制したが、その裏2点を奪われ逆転された。
すかさず5回に2点を挙げて再び主導権を握り、8回に2点を加えて勝利を決めた。
八木沢が立ち直り、後半は付け入るスキを与えなかった。無四球はさすがだった。
このあとの試合は八木沢の活躍がひときわ光った。
準々決勝の八幡商(滋賀)との試合は大変な苦戦を強いられた。
なんと延長18回を戦い、0−0で引き分けたのである。八幡商・駒井のシンカーが
コーナーに決まり作新打線は8安打7死球を奪いながら要所を抑えられた。
八木沢はさすがで、8安打を許したものの無四球であった。
再試合も接戦となり、作新学院は2−0と薄氷を踏む内容となった。
先発投手に熊倉栄一を起用し、八木沢をリリーフさせて逃げ切った。
準決勝は名門・松山商(愛媛)が相手。
1回に高山忠克が中前に適時打を放ち先制すると、3回にも3塁打の中野征孝が
ホームスチールを決めて2点差をつけた。この後は松山商・山下に抑えられた。
松山商は5回に適時打で1点、さらに9回裏1死3塁からスクイズで同点に追いついた。
延長16回、作新学院は失策からチャンスをつかみボークの後、高山の打球を遊撃手が
トンネルし得点、これが決勝点となった。
決勝戦の相手・日大三(東京)も投手力に優れ、井上と八木沢の投げ合いが続いた。
投手戦の中、終盤に入り8回中野の安打、高山の四球に続き柳田が
右前に安打し1点を入れ、これが決勝点となり八木沢が気力で投げ切った。
作新学院は初めて優勝旗を手にした。
紫紺の優勝旗が初めて利根川を越えたのだった。
八木沢は1回戦から準決勝の7回2死まで42イニング、145人の打者に無四死球。
連続35イニング無失点のピッチングを続けた。
こうして作新学院は八木沢の好投と中野の攻守にわたる活躍で栄光の座についた。
「春は投手力」といわれているが実力互角の投手を揃えていたのが、作新学院にとって
何よりの武器だったといえよう。
|